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「住友商事の企業内DXコミュニティが目指すもの~ファイナンス稲門会DX Talk Vol.4」レポート

昨今どの業界でも非常に高い関心を集めるDX。しかし、「何を以ってDXとするのか」はまだまだ混乱をきたしている部分も多いのが現状です。

WEBや書物から学べる事例も多くあるとはいえ、現場の最前線で切り拓く方のお話を聞くのが一番ためになるのではないかということで、住友商事の蓮村様にお越しいただき「担当者間連携から始めるトランスフォーメーション」と題してお話をうかがいます。

※この記事はファイナンス稲門会での蓮村氏のプレゼンテーションを記事に再編したものです。

【前半】担当者間連携から始めるトランスフォーメーション

住友商事 蓮村さん:

蓮村と申します、はじめまして。

「担当者間連携から始めるトランスフォーメーション」と題しましてお話させていただきます。

 まず自己紹介や活動の内容・経緯をご説明します。詳細はこちら

2006年頃、写真や映像といった無形コンテンツのデジタル化がいよいよ進んできた頃、デジタルコンテンツ制作分野で学生起業をしておりました。

その後2008年に新卒で電通に入社。電通では入社3年目より八火賞という新規事業コンペに2年連続採択され、新規事業開発関連部署に異動しました。以後自社や取引先の新事業の企画開発に従事し、2016年には「FINOLABO」という日本初・最大級のフィンテックスタートアップのインキュベーションオフィスの立ち上げ等をしました。

住友商事には2019年に転職し、ロボティクスやインダストリアルIoTに代表されるハードウェアスタートアップの成長をサポートするHAX Tokyoというアクセラレータープログラムの立ち上げに携わりました。

HAX Tokyoでは採択したスタートアップの最新技術をDXに活用することも視野に入れていました。活用先は自社に限ることは御座いませんので、企業の垣根を超えて、様々な企業内でDXの推進を担う方にHAX Tokyoの採択スタートアップを紹介したい思いました。そこで、会社にお勤めでDXを推進する立場にいる人達と連携してゆく活動を開始しました。

現在はHAX Tokyoの運営体制も一定程度確立したこともあり卒業し、新たに「量子技術による社会変革“Quantum Transformation (QX)”」を提唱・推進するQX Projectを住友商事内にて、その分野の第一人者と共に立ち上げ、量子コンピューティングによる新産業創造という視点で様々なイノベーターと企業の枠を超え連携しています。

本気でDXを推進するならば、あなたは「担当者」ではないはずだ

蓮村さん:「DXって何だろう?」という時に、一つの定義のデファクトとなるのが経済産業省のDXレポートに書いてあることだと思いますが、ここでは噛み砕いて乱暴かつ抽象的に「DXとは生き残りをかけた戦いである」と仮定してみます。

“戦い”なので、会社の中のDX担当者を兵隊に例えてみたいと思います。そして、その類型として仮に下記のようなカテゴリを提起してみようかと思います。

①志願兵…自分で手を上げてDX専門部署等に異動してきた人達です。モチベーションも高いことが多いでしょう。

②正規兵…大企業のジェネラリストのイメージが近いでょうか。直接の切っ掛けは上からの命令によるジョブローテーションにてDX関連部署に異動したのだと思います。

③傭兵…「お金貰えれば戦いますよ」といった、外部のDXコンサルやITベンダー、フリーランスのようなイメージです。転職を繰り返す専門職もこのカテゴリに近いかもしれません。

④民兵…そもそも兵隊じゃないのですが、否応なくDXに巻き込まれ戦いを余儀なくされたイメージです。

私はこのようなDX担当者向けの講演やセミナーの機会を頂きますと、最初に『さあ、あなたは①~④のどれに当てはまりますか?』という質問を致します。

①~④はミッシーではないですし、定義もただのイメージで明確ではないのですが、オーディエンスの方々は暫し自分自身のスタンスや立場を再確認してくださる様子です。

質問の内容やセミナーの背景から、オーディエンスの方々は『きっと①に近い程良くて、④に近い程DX担当者の理想からは遠いのであろう』と考える方が多いようです。しかし、実はこの問いはただの眠気覚まし、セミナーの導入であって、それほど深い意味はありません。DXという戦い、これを成すのに立場や経緯は重要ではないと私は思います。

では何が大切なのかと申しますと、(少しずるいのですが)質問の選択肢には登場しなかった、第5の兵種、「義勇兵」とも呼ぶような人々を巻き込めるか、見出せるか否か、だと思っています。

⑤義勇兵…あなたの戦う理由や目的を理解・共感し、援護してくれる人たち。社内にも社外にも、どこにでも現れ得るし、中々見つからない事も多い。

良くある小さい例であれば、自分の直属の決裁権者(上司)がなかなか「うん」と言ってくれないような場合に、ラインの違う幹部や社外の権威が賛同しそれとなく後押ししてくれるようなイメージです。もっと顕著な例では、2社以上のJVで挑む新規事業をボトムアップで立ち上げる場合等は、多くの義勇兵たる協力者、賛同者を自社や相手先に獲得してゆかねば全く前に進まないでしょう。

基本的に義勇兵はお金では動きません。お金で動くのは傭兵です。内発的動機が響き合い、共感に基づくコラボレーションに繋がるのが義勇兵の特徴と考えています。

従いまして「共感を得る」ことが、DX現場推進者には非常に大切だということとなります。小さいことをばかりを言っていたり、愚痴っぽかったり、口先だけで行動が伴わないと、義勇兵に限りませんが、共感をもって応援してくれる人は現れないでしょう。

そういう意味で、会社の命運を賭けたトランスフォーメーションを実行する人の意識は、言われてやっている(Given)響きのある担当者ではなく、自らの志をもって進めていく主体者(Owner)なる必要があります

『今月からDXの担当になりました蓮村です。』と私が自己紹介したとします。皆さんは、私が本気でDXを自社や自国の命運を握るテーマと自覚し臨んでいるのか、疑問に思いませんか? 遠くない将来、また別の辞令が出れば『DXの担当からは離れることになりました。』と何の躊躇もなく挨拶する姿が目に浮かびませんか?

どのように熱意を伝えていくか

DXの成否を握る共感・賛同を得るための前提として、トランスフォーメーションの実行者は担当者ではなく主体者でなくてはならない点をお伝えしました。併せてもう一つお伝えしたいことがあります。それは主体的に動く主体者であっても、なんでもかんでも共感を得られるわけではないという点です。当たり前ですが。

主体者が共感を得るためにまず重要なのは「Why?」です。担当サラリーマンであれば「会社からやれと言われたから給料分やります」という極めて明快なWhyがありそれも通用(?)するのかも知れません。一方「自分がOwnerとして主体的にやっています」と言う際、共感する可能性のある、少しでもあなたに興味を抱いた人は「なんでそんなことをするのですか?」と疑問も頂くでしょう。

それに明確に答え、共感を得る「The reason why」が絶対に必要です。この、人に想いを伝える考え方として“ゴールデンサークル”という有名なモデルがあります。人に想いを伝え、相手を動かしたいときに、Whatや、howから語っても相手には響かない。Whyから伝える必要がある、という考え方です。

WHAT:「新商品や新サービスを作りたい」「DXやらねばならない」という形から入る話や、HOW:「AI使いたい」、「ブロックチェーン使って何かやりたい」などは本質的な目的や理由ではないはずです。よく見かけますが。

一方で、WHYを伝えるときにも、「社会課題を解決したい」「SDGsを実現したい」という誰でも言える漠とした総花話やテーマでは共感は生まれず、多くの場合義勇軍は動かせません。

良いWHYには、その思いに至るまでの主体人格の実体験や出来事がまずあります。そしてそこから見出された明確な課題、それを解決するべく今まで取ってきた過去の実活動・実績、それらに基づく一貫性のある言葉があって初めて説得力が生まれます。

この説得力をもって義勇軍を巻き込んでゆき、トランスフォーメーションという戦いに挑むわけです。

更にこの「戦い」の定義を、競合他社や他国経済圏と叩き合う戦いではなく、“人類全体のサステナビリティをかけた人類自身との戦い”等と定義することによって、一見競合他社、ライバルだと見える人達であっても、義勇兵になってくれる可能性も出てきます。

この「巻き込み力」を産み、ことを成すためにも、まず担当者は担当者であっても、少なくとも自己の意識として主体者となり、Whyを伝え、「戦いの定義」を広く遠大なところから始める、というのが私の想いです。

【後半】担当者間連携から始めるトランスフォーメーション

企業間連携で連携するのはどこの誰なのか?

蓮村さん:ここからは、担当者間連携から始めるトランスフォーメーションの「連携」って何なのかというお話をしていきましょう。

スタートアップ企業と大企業の共創を例に挙げてみます。

DXに代表されるトランスフォーメーションの手段として、スタートアップとの協業にフォーカスするケースは昨今とても多いと思います。

スタートアップはイノベーティブな技術に優れ、レガシーやジレンマも少なく、ディスラプティブなビジネスモデルに打って出易いところが長所です。

一方で大企業は、歴史に紐づく安心安全信頼のブランドがあり、社会への浸透度の高さや資本力・営業力を持っています。これを掛け合わせることで理想的な協業協創が生まれるというのが理論上の狙いです。

創業者の人格が色濃く現れるスタートアップと、人数が多い故、社員一人一人のキャラは反映されない大企業、この二者の掛け合わせの重要なキーとなる第三の人格があります。それは大企業で実際にスタートアップと向き合う社員、所謂「担当者」です。

大企業と担当者は一体ではない

 この領域に携わる方には最早言うまでもなく自明ですが、この担当者如何で、上手くゆくものも上手くゆかない非常に重要なファクターです。スタートアップ協業に限りませんが、特にこの領域においては成否に占める担当者のセンスやパッションの占める割合が極めて大きくなります。

 何故かと申しますと、スタートアップと大企業の連携において、スタートアップの起業家はプレイヤーで、大企業側はサポーターというスタンスになりやすい傾向があります。しかし、うまく事を成す担当者のスタンスはどうかというと、間違いなく起業家と同じ「プレーヤー」となります。一人ひとりがアスリートやプロ選手と同じ「プレーヤー」なので、その資質が試合の勝敗に大きくかかわる点、ご理解頂けようかと思います。

大企業側の担当社員が「自分はサポートに徹する!」みたいなスタンスの場合があります。そのサポートに全力投球しているのであれば素晴らしいのですが、逃げの言い訳になっている場合もあるようです。

また、企業側の担当者を変えても同じパフォーマンスが出るようにと、属人性を排除し仕組み作りに固執した結果、『仏像を彫って魂を入れず』な結果に終わることがあります。

前半の“担当者”ではなく“主体者”の話にも通じますが、どこまで行っても新規事業やトランスフォーメーションといった新しい価値を産み出す行為は属人的な営みで、プロアスリートや芸術家等のクリエーターのようなものなので、仕組み化やマニュアル化には限界があるのはお分かり頂けるのではないでしょうか。

だからこそ、スタートアップ共創における大企業側担当者は、スタートアップ起業家と同様に自らがプレイをする心構えが必要だと思います。

「企業間連携で連携しているのはどこの誰なのか?」という冒頭の問いの答えは、大企業という実態の掴みにくい集合体としての法人格ではなく実体のある「プレイヤーとしての企業側担当者」とスタートアップ起業家という事になります。

スタートアップと大企業のコラボレーションはその実、大企業・担当者・起業家という3者によるトライアングルでオープンイノベーションが回っていることをまずは明確に意識する事が大事だと思っています。

何故、企業を超えた担当者間連携なのか?

スタートアップ起業家は、自分の判断で会社を切り盛りしていますが、大企業の担当者はそうではありません。大企業とスタートアップの連携において、担当者は非常に多くの課題に見舞われます。

大企業であればあるほど、歴史は長ければ長い程、課題は増える傾向に感じられます。自社に横たわる諸般の課題を解決してゆくという正攻法は決して諦めませんが、それとはまた別のアプローチもあります。それが「大企業の担当者間連携」です。

一昔前と比べるとアクセラレータープログラムやCVCといった大企業によるスタートアップとの共創、オープンイノベーションの取り組みは大きくその数や規模を増やしています。そしてそこではそれぞれ懸命な担当者が頑張っています。

大企業の担当者一人ひとりの影響力や決裁権限は小さくても、それぞれが様々な業界でプレイをしているその知見やネットワークを活かし連携することができます。スタートアップや大学、研究所など様々な団体からの持ち込み案件を、自社だけでなく他社担当者へ還流することで、ニーズマッチング機会を増やし、ミスマッチによるタイムロスを抑制できます。また担当者同士が互いに互いを社外のご意見番や情報源として使い、自社内をうまく動かしていくようなことも考えられます。或いは、「自分が稟議を通すときにはこういう方法だった」といったベストプラクティスを共有することもできます。

大企業側でオープンイノベーションに取り組む担当者同士の連携は、経済産業界全体のイノベーションの効率化、質の向上にもつながってゆくものだと思います。

このような発想のもとで、私は現在デジタル・トランスフォーメーションの更に先、より一層難しく、しかしだからこそ取れ高も大きく見込める領域であるクオンタム・トランスフォーメーションに取り組みながら、量子技術に可能性を見出す同志を募り、企業の垣根を超えたコラボレーションを推進しています。

 イノベーターやアーリーアダプターと呼ばれる人種は全人口のほんの僅かしかいないと言われます。須らく全てのオープンイノベーション担当者は、人数も少ないので、連携すべきだと思っており、是非明日から読者の皆様とコラボレーションできれば!幸いです。

アナログからデジタル、そしてクオンタムへ。来るべきQuantum Transformationの未来に向けて、一緒に次ぎのパラダイムシフトを巻き起こしませんか?

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