1. はじめに
1.1. フェイガーの設立とパーパス
株式会社フェイガーは、農業分野でのカーボンクレジット生成と販売を通じて、脱炭素農業の推進と農家の収益向上の両立を目指すスタートアップ企業です。2022年7月に設立されたこの会社は、「世界をもっとサステナブルに。社会にもっとフェアネスを。」というパーパスを掲げ、農業由来のカーボンクレジット市場の創造に果敢に挑戦しています。
1.2. 農業分野におけるカーボンクレジットの重要性
世界の温室効果ガス排出量の12%を占める農業分野には、大きな削減ポテンシャルがあると言われています。しかし、農家にとって脱炭素の取り組みは容易ではありません。そこで注目されるのが、カーボンクレジットの活用です。農家の脱炭素努力をクレジット化し、企業の支援を得ることで、取り組みの持続性と収益性を両立できる可能性があるのです。
2. フェイガーの革新的なビジネスモデル
2.1. 農家との密接な連携
フェイガーの特徴は、農家との密接な連携にあります。同社は農家と共同で脱炭素農業を推進し、その取り組みの成果をクレジット化。創出されたクレジットを企業に販売し、得られた収益を農家に還元するという、画期的なビジネスモデルを確立しました。
2.2. システム・IoTの活用による効率化
従来、カーボンクレジットの申請には膨大な手間と煩雑な書類が必要とされ、農家にとって大きな負担となっていました。しかしフェイガーは、独自のアプリを開発することで、農家の手間を大幅に削減することに成功。写真撮影とアップロードのみで申請が完了する仕組みにより、より多くの農家が脱炭素の取り組みに参加しやすくなったのです。
2.3. クオリティ管理へのこだわり
フェイガーは、現地視察や実測によるクレジットのクオリティ管理にも注力しています。不正を防止し、エビデンスを適切に蓄積する体制を整えることで、企業から信頼される高品質なクレジットの生成を可能にしています。この高いクオリティが、高価格での買取・販売を実現し、農家の収益最大化につながっているのです。
3. 着実に成果を上げるフェイガーのプロジェクト
3.1. 国内での実績
フェイガーの取り組みは、早くも具体的な成果を上げ始めています。2023年度は、14道府県の約60農家、1500haを超える生産者と協力し、水田の中干し期間延長によるメタン削減などの取り組みを実施。その結果、約6000tのクレジットがJ-クレジット制度認証委員会より認証されました。
3.2. 海外展開の計画
2024年度は、ベトナムをはじめとする海外プロジェクトにも進出予定です。また、「水田中干し」以外のメソドロジーにも取り組むなど、事業拡大に向けた意欲的な計画を立てています。2025年以降は、さらなるエリアと面積での良質なクレジット生成を目指し、日本の農業由来クレジット市場を牽引していく構想です。
4. 農家にとってのメリット
4.1. 追加収入の獲得
フェイガーとの取り組みは、農家にとって追加収入が得られる魅力的な機会です。水稲の中干し延長の場合、1haあたり5千円〜数万円の収入増が見込めます。将来的には、クレジット価値の上昇や認証の種類増加により、さらなる収益向上が期待できるでしょう。
4.2. 農産物のブランド力向上
カーボンクレジットの活用は、農産物のブランド力向上にも一役買います。特に海外輸出の際には、環境に優しい農法による産物としてアピールすることで、付加価値を高められます。こうしたブランディング効果も、農家にとっては大きなメリットと言えるでしょう。
4.3. 手厚いサポート体制
フェイガーは、農家が取り組みに専念できるよう、手厚いサポート体制を整えています。専門的な申請手続きは全て同社が代行し、設備投資も最小限に抑えられるよう配慮。農業日誌や飼育日誌があれば、すぐにでも始められる手軽さが、多くの農家から評価されています。
5. 企業の脱炭素ニーズへの対応
5.1. 信頼できる高品質クレジットの供給
企業がカーボンクレジットを活用するためには、信頼できる高品質なクレジットが不可欠です。フェイガーは、農家との密なコミュニケーションと徹底したクオリティ管理によって、その期待に応えます。こうして生成された「顔の見えるクレジット」は、企業のESG経営を多面的に支援する力を持っています。
5.2. トータルソリューションの提供
フェイガーは、企業のCO2削減目標達成に向け、トータルでソリューションを提供します。企業のニーズに合致したクレジットの探索から、自社で創出した農業由来クレジットの販売、クレジットの活用方法のサポートまで、ワンストップのサービスを展開。海外のボランタリークレジットなど、自社生成以外のクレジット調達も可能にすることで、多様な企業ニーズに柔軟に対応しているのです。
6. フェイガーの目指す世界
6.1. カーボンクレジットを起点とした持続可能な農業の実現
フェイガーの目標は、カーボンクレジットを起点として、持続可能な農業の実現と、フェアな社会の構築を実現することです。クレジットによる収益を通じて脱炭素農業を推進し、農家の収益向上を後押しする。そして将来的には、アジア中の農家とのネットワークを構築し、収量アップに寄与する農業資材・技術・設備などを広く展開していく壮大な構想を描いています。
6.2. 次世代へ繋ぐ食料生産体制の確立
日本の食料自給率が低下する中、フェイガーの取り組みは、持続可能な食料生産体制の確立に向けた重要な一歩と言えるでしょう。同社の挑戦が実を結べば、日本の農業は環境負荷を減らしつつ、経済的にも自立した産業へと生まれ変わるはずです。
7. おわりに
株式会社フェイガーの取り組みは、日本の農業が抱える環境と収益の課題解決に向けた、革新的なアプローチと言えます。カーボンクレジットという仕組みを梃子に、脱炭素化とビジネスの両立を図るその挑戦は、他産業にも大きな示唆を与えてくれるでしょう。
フェイガーの事業が、日本から世界へと持続可能な農業の輪を広げ、私たちの食を未来へとつないでいくことを、心から期待したいと思います。彼らの野心的な挑戦を、私たちCHALLENGERも引き続き応援していきます。
