企業と元社員の絆を再構築 – 中央大学企業アルムナイ研究会が切り拓く人材活用の新地平

日本の労働市場に新たな風を吹き込む挑戦が始まろうとしている。中央大学ビジネススクールの犬飼知徳教授を中心に設立された「企業アルムナイ研究会」が、企業と元社員の関係性に革新をもたらそうとしているのだ。7月30日に開催される設立記念セミナーを前に、この画期的な取り組みの背景と展望に迫る。

深刻化する人材不足と人的資本経営の潮流

現在、日本企業はかつてない人材不足の危機に直面している。少子高齢化による労働力人口の減少に加え、グローバル化やデジタル化の波が押し寄せる中、優秀な人材の獲得と定着が企業の死活問題となっている。さらに近年、人的資本経営の重要性が高まり、企業は単なる人材管理から戦略的な人材活用へとシフトを迫られている。

このような背景の中で注目を集めているのが「企業アルムナイ」の存在だ。アルムナイとは、主に学校の卒業生のことを指す言葉だが、企業においては退職した元社員を意味する。これまで日本企業では、退職者との関係性を積極的に維持する文化が乏しかったが、人材の流動化が進む現代において、この「中間労働市場」とも呼ばれる存在の価値が再評価されつつある。

中央大学企業アルムナイ研究会の挑戦

中央大学企業アルムナイ研究会は、企業と元社員の新しい関係性のあり方を追求し、本質的な企業アルムナイの価値を探求することを目的として設立された。研究会では、アルムナイの活用事例やその効果について実証的な研究を進めるとともに、企業や団体ごとに最適なアルムナイの構築方法を模索していく。さらに、「アルムナイ白書」の公開など、研究成果を広く社会に還元することで、日本の労働市場全体の活性化を目指している。

7月30日に開催される設立記念セミナーでは、人的資本経営の潮流とアルムナイの価値について基調講演が行われるほか、労働市場におけるアルムナイの実態についての報告が予定されている。

アルムナイがもたらす多様な価値

企業アルムナイの活用は、単なる人材の再雇用にとどまらない多様な価値を生み出す可能性を秘めている。例えば、元社員の経験やスキルを活かしたプロジェクトベースの協業、新たなビジネスパートナーシップの構築、若手社員へのメンタリングなど、その可能性は多岐にわたる。

また、アルムナイネットワークは企業文化の継承や発展にも寄与する可能性がある。退職した社員も含めた広義の「組織」を考えることで、企業の価値観や理念をより広く社会に浸透させることができるかもしれない。

さらに、アルムナイの存在は現役社員のモチベーション向上にもつながる可能性がある。退職後も会社とのつながりが維持されることで、社員のキャリア形成に対する不安が軽減され、より長期的な視点で仕事に取り組めるようになることが期待される。

課題と展望

一方で、企業アルムナイの活用には課題も存在する。日本企業には「終身雇用」の意識が根強く残っており、退職者との関係維持に消極的な企業も少なくない。また、アルムナイネットワークの構築・維持にかかるコストや、情報セキュリティの問題なども克服すべき課題だ。

しかし、これらの課題を乗り越え、企業アルムナイの可能性を最大限に引き出すことができれば、日本の労働市場に大きな変革をもたらす可能性がある。中央大学企業アルムナイ研究会の取り組みが、企業と個人の新しい関係性を築く一助となり、ひいては日本社会全体の活力につながることが期待される。

7月30日の設立記念セミナーは、こうした新たな挑戦の第一歩となる。人材戦略の転換点を模索する企業経営者や人事担当者、そして自身のキャリアに新たな可能性を見出したい個人にとって、まさに見逃せない機会となりそうだ。

【編集部コメント】
人材開発部門編集部より:
本研究会の取り組みは、日本の労働市場に新たな視点をもたらす可能性を秘めています。特に、人材の流動化が進む現代において、企業アルムナイの活用は企業の競争力強化と個人のキャリア発展の両立を図る上で重要な鍵となる可能性があります。今後の研究成果に大いに期待が高まります。多くの企業や個人が本セミナーに参加し、新たな人材活用の可能性について考えを深める機会となることを願っています。

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