不動産の「勘」を「科学」へ。タスキHD、人流分析の雄「LocationMind」への出資で狙うDXの次の一手

「この土地は将来性がある」「このエリアにはこんなテナントが合うはずだ」——。これまで不動産業界の多くは、こうした経験と勘に支えられてきた。しかし、その常識が今、デジタルの力によって根底から覆されようとしている。

不動産DXを推進する株式会社タスキホールディングスは2025年7月31日、CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)「TASUKI VENTURES」を通じて、位置情報ビッグデータ解析と人流分析サービスを展開するLocationMind株式会社への出資、および業務提携に関する基本合意書を締結したと発表した。

この提携は、アナログな慣習が残る不動産業界に、データドリブンという新たな羅針盤をもたらす狼煙(のろし)となるかもしれない。

提携のキープレイヤーは「東大発AI・宇宙ベンチャー」

今回の提携でタッグを組むLocationMind社は、ただのITベンチャーではない。東京大学の空間情報工学研究室からスピンアウトして誕生した、まさに「知の巨人」とも言えるAI・宇宙ベンチャーだ。

同社の強みは、独自開発した複数の生成AIモデルによる高精度な人流分析技術。150か国以上の位置情報データを扱い、国や自治体、大企業にサービスを提供するなど、その技術力とグローバルな展開力は折り紙付きだ。

なぜ「人流データ」が不動産の未来を変えるのか?

不動産開発において、その土地のポテンシャルを測ることは最も重要な要素の一つだ。これまでは周辺の人口や過去の取引事例などから価値を推測することが一般的だった。

しかし、LocationMind社の技術を使えば、「平日の昼間、この通りをどんな属性の人がどれくらい歩いているか」「週末の夜、このエリアにはどこから人が集まってくるのか」といった、より解像度の高い“生きたデータ”を分析できる。

これにより、タスキホールディングスは以下の3つの具体的なシナジーを見込んでいる。

  1. 多角的な事業性評価: 人流分析を加え、土地の潜在価値をより科学的に評価する。
  2. テナントリーシングの強化: データに基づき、その場所に最適なテナントを誘致する。
  3. 新サービスの提供: 自社サービス【ZISEDAI LAND】と人流分析を組み合わせ、新たな付加価値を創出する。

これは、不動産業界における意思決定プロセスが、経験則からデータに基づく科学的アプローチへと大きくシフトする可能性を示している。

注目すべきは「FUNDINNO」との連携スキーム

さらに興味深いのは、この案件が株式投資型クラウドファンディング国内最大手のFUNDINNO社との提携から生まれた「第1号案件」である点だ。

有望なベンチャー企業の発掘(ソーシング)は、多くのCVCが抱える課題だ。タスキホールディングスは、FUNDINNO社の持つ広範なネットワークと目利き力を活用することで、この課題をクリアし、迅速な投資実行に繋げた。これは、オープンイノベーションを推進する上で、非常に巧みで効率的な戦略と言えるだろう。

タスキホールディングスの今回の挑戦は、一社の成長に留まらない。不動産という巨大なアセットの価値を、データサイエンスの力でいかに最大化していくか。業界全体の未来を占う、重要な一歩となりそうだ。

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