もう「紙の山」とは呼ばせない。茨城の建機レンタル会社が挑む、SaaS導入による“現場DX”のリアル

時間外労働の上限規制が適用され、人手不足がさらに深刻化する建設業界の「2024年問題」。この巨大な課題に、業界全体が変革を迫られている。そんな中、解決の鍵として注目されるのがデジタルトランスフォーメーション(DX)だ。

今回、茨城県つくば市を拠点とする建機レンタル会社「レントリーつくば株式会社」が、SORABITO株式会社のSaaS型サービス「i-Rental 点検」の導入を決定。この一見地味に見えるニュースの裏には、多くの中小企業が抱える根深い課題と、それを乗り越えようとする力強い挑戦の物語があった。

「あの点検記録どこだっけ?」現場のリアルな悩み

レントリーつくばが直面していたのは、多くの現場が共感するであろう“紙”との戦いだった。

  • 属人化する紙の山: 点検表はすべて紙。整理や保管方法は現場や担当者ごとにバラバラで、標準化されていなかった。
  • 探す手間の増大: 過去の点検履歴を確認するには、オフィスに積まれた膨大な紙の山から、該当の一枚を探し出す必要があった。
  • 非効率な情報共有: 機械の修理状況を把握するには、整備部門とフロント部門が電話や口頭で都度確認。タイムラグや伝達ミスも課題だった。

これらの課題は、日々の業務効率を大きく低下させ、部門間のスムーズな連携を阻む要因となっていました。

スマホが変える、現場のコミュニケーション

この根深い「紙文化」にメスを入れるのが、SORABITOが開発した「i-Rental 点検」だ。このSaaSは、レントリーつくばの課題をピンポイントで解決する機能を備えている。

  1. 点検・修理をスマホで完結: これまで紙に手書きしていた点検項目を、整備士が手元のスマートフォンでタップして入力。現場で撮影した写真も、そのまま紐づけてアップロードできる。
  2. 情報はリアルタイムでクラウド共有: 登録された点検・修理情報は、即座にクラウド上で共有される。フロント担当も営業担当も、いつでもどこでも最新の機械ステータスを確認でき、「あの機械、今どうなってる?」という電話確認が不要になる。
  3. 履歴検索は一瞬: 機械ごとに過去の全データ(点検、修理、写真)が一元管理されるため、検索は一瞬で完了。膨大な紙の山をひっくり返す作業は、過去のものとなる。

これにより、業務の属人化を防ぎ、部門間の連携をスムーズにし、会社全体としての生産性向上を狙う。レントリーつくばの挑戦は、まさにDXの本質を突くものだ。

一社の変革が、業界の「エコシステム」を創る

SORABITOは、自社のビジョンを「はたらく機械のエコシステムを共創する」ことだと語る。
レントリーつくばのような一社一社のDX支援は、点と点が繋がり、やがて業界全体の非効率を解消する「面」となる。デジタル化されたデータは、単なる業務効率化に留まらず、将来の需要予測や適正な修理費用の算出など、新たな価値を生み出すナレッジベースへと進化していくポテンシャルを秘めている。

大企業だけでなく、地域に根差す中小企業が主体的にDXを推進し、変革の担い手となる。SORABITOの「i-Rental 点検」のような現場起点のSaaSは、その力強い後押しとなっている。建設業界の未来を左右する「2024年問題」への挑戦は、こうした地道だが確実な一歩から始まっているのだ。

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