「AIの導入効果が見えない」「実験段階で頓挫し、現場の業務に組み込めない」——。多くの企業のCIO(最高情報責任者)が、AI戦略と実行の間に横たわる深い“ギャップ”に頭を悩ませている。
このニュースは、単なる製品認定ではない。「実験」のためのAIから、「業務」に組み込まれ、確実に成果を出すAIへと、市場が本格的にシフトする狼煙だ。
なぜ、SAPとの「ネイティブ統合」が重要なのか?
企業の心臓部であるエンタープライズプランニング(経営計画)は、今や硬直化し、柔軟性を失いつつある。バラバラのシステム、手作業での場当たり的な対応、サイロ化したチーム…。DataRobotのCPO(最高製品責任者)、Venky Veeraraghavan氏は、こうした現状が「スピードと正確性が最も重要となる局面における意思決定の遅れ」を招いていると指摘する。
これまで多くのAIソリューションは、こうした基幹システムの外側で“実験”的に動かされることが多く、現場のワークフローに真に統合されることは稀だった。しかし、DataRobotのプラットフォームは違う。
SAPのデータとワークフローに「ネイティブに統合」されることで、既存のシステムやプロセスを中断することなく、財務やサプライチェーンといった企業の根幹業務に、インテリジェントな意思決定支援、自動化、継続的な学習機能を直接組み込むことを可能にするのだ。
「インテリジェントプランニング」がもたらす未来
DataRobotが実現するのは、新世代の「インテリジェントプランニング」だ。それは、常に外部環境の変化を学習し、リアルタイムで適応し続ける、まさに“生き物”のような計画プロセスである。
これにより、CIOはこれまで頭を悩ませてきた「AI戦略と実行のギャップ」を埋めることができる。AIはもはや、一部のデータサイエンティストが使う専門ツールではない。意思決定が下される最前線、すなわちビジネスチームの手の中に直接届けられる、実用的な武器となる。
SAPのグローバルVPであるDarryl Gray氏が「エコシステムのイノベーションは、SAPのビジョンに不可欠」と語るように、今回のDataRobotの認定は、両社がクラウドファースト時代における企業のDXを共にリードしていくという強い意志の表れだ。
「AIの実験はもう終わりだ」。DataRobotとSAPの強力なタッグは、そう宣言している。これからの企業に問われるのは、AIを“導入”することではなく、いかに“業務に溶け込ませ”、経営の血肉とするかである。
コメントを残す