2024年12月4日
地方の未利用資源に新たな価値を見出し、環境課題と地域経済の活性化を同時に解決する。この困難な命題に挑戦を続けるのが、青森県を拠点とするappcycle株式会社だ。同社は本日、地方創生とスタートアップ支援の第一人者である松本直人氏(ABAKAM代表取締役)の顧問就任を発表。青森発の環境イノベーションを全国・海外へと展開する新たなステージに踏み出す。
地域資源の価値転換による新産業創出モデル
【産業創造部門・編集部】
appcycle社の事業モデルが注目される理由は、「未利用資源の価値転換」という観点にある。青森県は全国のりんご生産量の約60%(年間約44万t)を占める一大産地だが、加工後の残渣処理が環境面・コスト面での課題となっていた。同社はこの「廃棄物」を、東北大学との共同研究により環境配慮型の合成皮革「RINGO-TEX®」として再生。原料の72%が廃棄物で構成される同素材は、従来の合成皮革と遜色ない品質を実現しながら、CO2排出量の削減やアニマルウェルフェアへの貢献も果たしている。
地方発スタートアップの成長戦略
注目すべきは、今回の松本氏招聘に見える成長戦略だ。同氏は36歳でフューチャーベンチャーキャピタルの代表取締役に就任し、6年半の在任中に約50本・総額240億円のファンドを組成。100社以上の投資支援実績を持つ。
松本氏は「当社は、食材の残渣を衣料や雑貨などにアップサイクルすることで、衣食住の食以外のマーケットに拡大させ、地域に新たなサプライチェーンを構築し、地域の魅力を高める産業を創出できる企業です」と、同社の可能性を評価する。
各ステークホルダーへの示唆
【未来戦略部門・編集部】
本事例から、以下の示唆が得られる。
経営者への示唆:
- 地域特有の課題を、新技術との組み合わせにより解決することで、グローバルに通用する事業モデルを構築できる
- 産学連携による技術開発と、経営専門家の知見活用を両輪とした成長戦略の有効性
- 環境価値と経済価値の両立による、持続可能なビジネスモデルの構築
投資家への示唆:
- 地方発スタートアップの持つ、未開拓市場での価値創造ポテンシャル
- 食品廃棄物の再資源化という、グローバルな社会課題に対するソリューション
- 産学官金連携による、リスク低減と成長加速の可能性
メディアへの示唆:
- 地方の課題解決から生まれる新産業創出の可能性
- 環境技術と地域経済の活性化を結びつける新たな産業モデル
- 次世代の地方創生を担うプレイヤーとしての地方発スタートアップの重要性
地方には豊富な未利用資源が眠っている。それらに新たな価値を見出し、グローバル市場につなげていく。appcycle社の挑戦は、地方からの産業創造における一つのモデルケースとなるだろう。
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