2025年3月に設立されたTHE WHY HOW DO COMPANY株式会社のブランド共創部は、経営人材のキャリア構築と成長を支援する新たな取り組みを展開しています。本稿では、特に「他者と自分を同時に幸せにする」メンター・メンティー制度と、価値創造パートナーおよび価値共創パートナーとの連携という観点から、経営人材のキャリア発達にどのような価値を提供できるかを考察します。
経営人材が直面する現代のキャリア課題
現代の経営環境において、経営人材は複雑かつ本質的な課題に直面しています。大手企業の新規事業担当者や役員との対話を通じて、以下のような共通の課題が見えてきました。
社内の意思決定プロセスの複雑さが行動の遅延をもたらし、市場機会を逃してしまうことがあります。また、既存ブランドの成功体験が強すぎるあまり、新たなアプローチへの抵抗感が根強く残っています。さらに、深い専門性と広い視野を同時に持つことの難しさや、変化の速い環境で継続的に自己更新していく必要性も課題となっています。
これらの課題は、個人の努力だけでは解決が難しい構造的な問題であり、より包括的な支援の仕組みが求められています。
「価値無限思考」に基づくメンター・メンティー制度
2025年2月27日に開始した「他者と自分を同時に幸せにする」メンター・メンティー制度は、岩尾俊兵社長が提唱する「価値無限思考」を実践する場として機能しています。岩尾社長の「価値創造経営の力で、もう一度豊かになる」という理念と「限られた価値を奪い合うのではなく、協力によって無限の価値を創造できる」という思想に深く共感し、それを経営人材のキャリア構築に応用したのがこの制度です。
この制度のユニークな特徴は以下の3点です。
継続的な伴走関係の構築
一度きりのアドバイスではなく、目標設定→実行→振り返り→次の行動という成長サイクルを共に歩む継続的な関係を確立しています。この持続的な対話を通じて、経営人材は実践と理論を往復しながら経営判断力を磨くことができます。
特に新規事業開発や組織変革など長期的な取り組みでは、継続的なフィードバックとリフレクションが成果を高める重要な要素となります。
多様な専門性の交差
IT、HR、マーケティング、経営など異なる専門性を持つメンターからの多角的アドバイスにより、単一視点では見えなかった解決策を発見できる環境を提供しています。
経営人材には組織全体を俯瞰する視点が求められますが、自身の専門分野や経験だけでは視野が制限されがちです。多様なメンターとの対話を通じて、自らの思考の前提や盲点を認識し、より複合的な視点から課題解決を図る能力を養うことができます。
対話の記事化と知見の共有
この制度の最も革新的な特徴は、メンターとメンティーの対話内容を、両者の許諾を得て匿名化し記事として公開する点です。これにより一対一の対話が社会全体の知恵となり、個人の経験を組織的学習へと転換しています。
記事化された対話は、同じ悩みを持つ経営人材への道標となるとともに、失敗と成功の知恵の共有、新たな出会いと協創の契機という三つの価値を生み出しています。「個人の経験→社会の知恵→新たな個人の成長」という循環が、社会全体の知的資本を高めていくのです。
価値創造パートナーとの連携がもたらす視野拡大
メンター・メンティー制度と連携して経営人材の成長を支援しているのが、価値創造パートナー制度です。岩尾社長の共感を得て2025年1月に始動したこの制度では、多様な専門性を持つ有識者をパートナーとして迎え、その知見と経験を経営人材のキャリア発達に活かしています。
価値創造パートナーには、「ニコニコ動画」運営会社の元社長である杉本誠司氏、映画監督・脚本家の井上博貴氏、元全国市長会副会長で元滋賀県湖南市長の谷畑英吾氏などが参画しています。彼らの多様なバックグラウンドは、経営人材に以下の価値をもたらします。
業界の垣根を超えた知見と経験へのアクセスにより、経営人材は思考の枠組みを拡張し、新たな視点を獲得できます。また、異なる組織文化や価値観に触れることで、より柔軟で多角的な経営アプローチを身につけられます。さらに、専門領域を超えた「共創」の実践を通じて、これまでにない価値創造の可能性を探ることができます。
価値共創パートナーとの協働による実践の場
ブランド共創部では、価値創造パートナーに加えて、価値共創パートナー（大学・自治体など）との連携も重視しています。これらの機関との協働は、経営人材に理論と実践を融合する貴重な機会を提供します。
私自身は情報経営イノベーション専門職大学（iU）客員講師も務めており、学術機関との橋渡し役として機能しています。大学との連携により、経営人材は最新の理論や研究成果へのアクセスが可能になるとともに、学生や研究者との対話を通じて新たな視点を獲得できます。
また、価値創造パートナーである谷畑英吾氏のネットワークを活かした自治体との連携も進めています。これにより、公共セクターの視点と民間セクターの視点の融合、地域課題解決に貢献する事業創出の機会などが経営人材に提供されます。
価値共創パートナーとの連携は、経営人材に「実践の場」を提供します。理論や構想を実際のプロジェクトとして形にする機会を通じて、多様なステークホルダーを巻き込む調整力や、社会的価値と経済的価値を両立させる事業設計能力など、キャリアの幅を広げる重要な経験を積むことができます。
ブランド共創部による経営人材支援の5つの柱
メンター・メンティー制度、価値創造パートナーとの連携、価値共創パートナーとの協働によるブランド共創部の経営人材キャリア支援は、以下の5つの柱で構成されています。
発信力の強化
「CHALLENGER/産業創造の挑戦者たち」を通じて、経営人材の思想や取り組みを効果的に発信する支援を行っています。特に「WHY（なぜ）」を掘り下げることで、経営人材自身の思考を整理し、社内外のステークホルダーへの説得力を高めることができます。
この「発信設計」の能力は、経営人材が新規事業や組織変革を推進する際の「巻き込み力」の基盤となります。社内では変革への理解と支援を得やすくなり、社外では投資家・取引先・自治体との関係構築が促進されます。
実践の場の提供
ワイハウのグループ企業ネットワークと価値共創パートナーを活用し、経営人材の構想やアイデアを迅速に検証できる環境を提供しています。社内承認プロセスに依存せず、外部で仮説検証を行える機会を創出することで、「小さく失敗し、早く学び、すぐに軌道修正する」というアジャイルな思考と行動を促進します。
多様な知見へのアクセス
メンター・メンティー制度と価値創造パートナーを通じて、異なる業界・分野の知見や経験にアクセスできる環境を整備しています。この多様性が経営人材の「複合的思考力」と「創造性」を高め、キャリアの可能性を拡大します。
知識の体系化と共有
対話の記事化と価値創造パートナーの専門知識を組み合わせ、経営人材の経験や知見を組織や社会の共有財産として活用する仕組みを提供しています。この「知識の循環」が、個人と組織の持続的成長を支えます。
継続的学習コミュニティの形成
経営人材が持続的に成長し、互いに刺激し合う「共創コミュニティ」を形成しています。このコミュニティを通じて、経営人材は組織や業界の枠を超えた「つながり」と「学びの場」を得ることができます。
経営人材のキャリア構築における実践的ステップ
ブランド共創部の支援を活用して、経営人材が自身のキャリアを構築するための実践的ステップを以下に示します。
「WHY」の明確化と定期的な問い直し
経営人材として自身の「なぜ」を明確にし、定期的に見直す習慣を持つことが重要です。「なぜこの事業に取り組むのか」「なぜこの変革が必要なのか」といった根本的な問いは、困難な状況での判断の指針となり、周囲を巻き込む力の源泉となります。
メンター・メンティー制度と「CHALLENGER」のインタビューを通じて、この「WHY」を掘り下げ、明確に言語化することで、経営人材としての軸を強化できます。
異質な環境への意図的な参加
自分の専門領域や業界の外側に定期的に出る機会を作ることが重要です。価値創造パートナーとの対話や価値共創パートナーとのプロジェクトを通じて、異なる組織文化や思考法に触れることで、視野を広げ、創造性を高めることができます。
実践と振り返りのサイクル確立
経営人材の成長において、実践と振り返りのサイクルは極めて重要です。メンター・メンティー制度を活用して、定期的に自身の行動や判断を振り返る機会を持ち、「何がうまくいき、何がうまくいかなかったのか」「なぜそうなったのか」「次回はどうすれば良いのか」を掘り下げることで、経験を体系的な学びに変換できます。
知見の共有と社会還元
経営人材として蓄積した経験や知見を、個人の資産にとどめず、組織や社会の共有財産として活用することが価値を高めます。メンター・メンティー制度への参加と対話の記事化への協力を通じて、自身の学びを他者の成長に役立てることで、より大きな価値創造に貢献できます。
「共創」を通じた価値創造
価値創造パートナーや価値共創パートナーとの協働を通じて、組織の枠や専門領域の壁を越えた「共創」に取り組むことが、経営人材のキャリアを豊かにします。異なるバックグラウンドや専門性を持つ人々との協働から、新たな価値を創出する経験が、経営人材としての可能性を広げるのです。
結び：価値無限思考がもたらす新たなキャリアモデル
ブランド共創部が提供するメンター・メンティー制度、価値創造パートナー、価値共創パートナーとの連携は、経営人材のキャリア構築と企業の価値創造を同時に実現する「共創の場」を創出しています。
「価値無限思考」に基づく「他者と自分を同時に幸せにする」考え方は、経営人材個人の成長と、組織・社会全体の発展を分けて考えず、お互いを高め合う関係として捉える新たな視点を提示しています。この考え方は、限られたポジションや報酬の「奪い合い」ではなく、新たな価値の「創り合い」によって無限の可能性を追求するものです。
この場を借りて、このような取り組みを実現する機会を与えてくださった岩尾俊兵社長に心からの感謝を申し上げたいと思います。岩尾社長の「価値創造経営の力で、もう一度豊かになる」という企業理念と、「価値無限思考」という発想がなければ、ブランド共創部もメンター・メンティー制度も実現しませんでした。私自身、岩尾社長との対話を通じて多くの気づきを得、成長する機会をいただいていることに深く感謝しています。
「少しでも多くの挑戦と応援が生まれるために」というCHALLENGERのスローガンのもと、経営人材の皆様と共に、組織の枠を超えた対話と協働を通じて、個人のキャリアの可能性を広げるとともに、日本企業の持続的成長と社会的価値創造に貢献する「共創エコシステム」を構築していきたいと考えています。
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浜崎正己（THE WHY HOW DO COMPANY株式会社 ブランド共創部 担当部長 / CHALLENGER/産業創造の挑戦者たち 編集長）
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