【サーチファンド白書2023年】後継者不在問題に挑むサーチファンド、過去最多の投資実行数を記録 ~新たなステークホルダーの参入で、さらなる広がりに期待~

2023年のサーチファンドによるM&Aは、過去最多の9件を記録しました。Growthix Investment株式会社が発行する【サーチファンド白書2023年】によると、日本の中小企業が抱える後継者不在問題の解決策として、サーチファンドへの注目が高まっているようです。

サーチファンドとは、企業経営を志す個人が投資家から資金調達をし、自ら後継者不在に悩む企業を探し出して買収・経営していくという、アメリカ発祥のM&Aの仕組みを指します。国内のサーチファンドは大きく、個人投資家から資金を調達するトラディショナル型と、運営会社が設立したファンドから資金提供を受けるアクセラレータ型の2種類に分類されます。

アクセラレータ型の代表例として、サーチファンド・ジャパン、山口フィナンシャルグループ、ジャパン・サーチファンド・プラットフォーム(JSFP)など、金融機関の後押しを受けて事業を展開している事業者が挙げられます。一方、Growthixグループは日本独自の「日本式サーチファンド」を提唱し、サーチャーの育成・輩出に注力。案件ごとにファンドを組成する柔軟性の高さも特徴的です。

2023年は自治体との連携も進み、北九州市がサーチファンド事業者と協定を結んだほか、東京都も中小企業支援を目的とした「Tokyo Search Fund」を設立しました。また、沖縄県の企業もサーチファンドに参入を表明するなど、全国的な広がりを見せています。

メディアにおけるサーチファンドの露出も増加傾向にあります。専門紙や一般紙、地方メディアでの掲載が目立ち、社会的な認知度が徐々に高まっている印象です。ただし、深刻化する後継者不在問題に対し、サーチファンドによる事業承継の成功事例をさらに増やしていく必要性は高いと言えるでしょう。

2023年には、サーチファンドで買収した企業の売却(EXIT)も国内で初めて実現。本格的なEXITの動きはまだ先になりそうですが、投資家にとってのリターンの目安が徐々に見えてきた点は大きな前進と言えます。

同白書は、2024年の展望として、金融機関など従来の業界枠を超えた新たなステークホルダーの参入に期待を寄せています。多様なプレイヤーを巻き込みながら、サーチファンドが日本の中小企業という産業の屋台骨を支える存在として成長を遂げる未来に思いを馳せずにはいられません。後継者不在問題の解決と新たな産業創造の両立を目指し、果敢に挑戦を続けるサーチファンド事業者の皆様に心からエールを送りたいと思います。