過去最多376万人の巨大市場。オープンハウスがGTNと仕掛ける「外国人の住まい」問題解決という、次なる成長戦略

在留外国人数、過去最多の376万人——。この数字は、もはや単なる社会動態のニュースではない。日本の未来を左右する、巨大な「市場機会」の到来を告げる号砲だ。
しかし、この成長市場には、深く根を張るペインポイントが存在する。「外国人というだけで、家を借りられない」。この構造的な課題に対し、不動産業界の巨人・株式会社オープンハウスグループが、外国人専門の支援企業・株式会社グローバルトラストネットワークス(GTN社)と手を組み、メスを入れる

彼らが開始した啓発キャンペーンは、単なるCSR活動ではない。未来の巨大市場のルールを自ら作り、顧客を獲得するための、極めて戦略的な一手である。

7割が経験する「外国人お断り」という不条理な参入障壁

GTN社の調査によれば、部屋探しで入居を断られた経験を持つ外国人のうち、実に69.7%が「外国人という理由」を挙げている。言語の壁、保証人問題、文化の違いへの漠然とした不安といった、旧態依然とした商慣習が、376万人という巨大な潜在顧客を市場から締め出しているのだ。

この領域の最前線を知るプロフェッショナルであるGTN社は、年間20万件以上もの外国人からの相談に向き合っている。一方のオープンハウスグループは、「やる気のある人を広く受け入れ、結果に報いる」という価値観のもと、国籍を問わない人材採用や海外事業展開で成長を続けてきた。不動産のプロと、外国人支援のプロ。この両社が組むのは、必然と言えるだろう。

キャンペーンの裏にある、巧みな「市場啓蒙」戦略

今回のキャンペーンは、対談記事とアンケート調査という二本柱で構成される。しかし、その真の狙いは、単なる情報発信ではない。

  1. 課題の言語化と当事者意識の醸成: 対談記事を通じて、外国人が直面するリアルな困難を言語化し、社会に発信する。これにより、不動産業界や大家が抱える漠然とした不安を解消し、「他人事」だった問題を、市場に関わるすべてのプレイヤーの「自分ごと」として考えるきっかけを作る。
  2. データによる“声”の可視化: アンケート調査で、これまで埋もれていた外国人の“声”をデータとして可視化する。これは、今後の商品開発やサービス改善に繋がる、極めて貴重な一次情報となる。

つまり、オープンハウスは、自社の「O-EN HOUSE PROJECT」の一環としてこの問題に取り組むことで、「外国人の住まい問題を本気で解決しようとするリーディングカンパニー」という強力なブランドイメージを構築し、将来の顧客ロイヤルティを獲得しようとしているのだ。

「社会課題の解決」が、最強のパーパスになる時代

今後、日本の労働力人口が減少していく中で、外国人材との共創は、すべての業界にとって避けては通れないテーマとなる。
オープンハウスとGTNの挑戦は、社会課題の解決に真正面から取り組むことが、結果として企業の持続的な成長と、他社には真似のできない競争優位性を生み出すという、現代のパーパス経営の王道を示している。

彼らが開けようとしているのは、単なる賃貸市場の扉ではない。多様な人々が共生する、日本の新しい未来への扉だ。この未開拓市場を制する者が、次の時代の不動産業界の覇者となるのかもしれない。