ビジネスの世界で、初対面の商談相手との緊張感を和らげるために「アイスブレイク」というコミュニケーション技法がよく用いられています。アイスブレイクでは、共通の話題やお客様が関心を持っている話題を展開することが重要だと言われています。
しかし、使い方を誤ると、アイスを壊すどころか、お客様との間に大きな隔たりを生んでしまうこともあるのです。セールスコンサルタントの今井晶也氏は、ある動画を例に挙げ、アイスブレイクの注意点を指摘されています。
特に気をつけたいのが、初対面でのプライベートな話題や、そもそも雑談自体を不要だと考えている人が少なくないという点です。セレブリックス社の調査によると、過半数の人が商談前の雑談は不要だと答えているそうです。初対面の人にプライベートな話題でズカズカ来られるのは、怖くて引いてしまいますよね。
では、なぜ多くの組織で「まず雑談せよ」と言われてしまうのでしょうか。今井氏は、日本企業の商文化が既存顧客営業やルート営業を中心としていたことが関係しているのではないかと推察されています。
一方で、今井氏はアイスブレイクそのものが不要だとは考えておらず、お客様が関心の高い話題や耳寄りの情報で対話が生まれるのは歓迎だそうです。最近では生成AIを活用して、お客様の情報を収集したり、業界のあるある話を仕入れたりすることもできるようになってきました。
何より大切なのは、商談の目的は雑談ではなく商談だということです。理想のアイスブレイクとは、ビジネスパーソンとしての印象や立ち振る舞いでアイスが自然に壊れていくことなのかもしれません。
商談の冒頭では、親しみやすく誠実な第一印象、スマートな名刺交換、インパクトのある目的提示、簡潔明瞭な商談ハイライトの説明、惹き込まれる会社紹介など、基本的なセットアップを隙なく、マイナスなく実施することが大切です。
地域の話をするなら、ある程度関係ができたタイミングや取引が始まったタイミングで、帰り際のエレベーターへの道のりで話すのも一案かもしれません。そのころには、雑談で終わらない繋がりのきっかけが生まれているかもしれませんね。
アイスブレイクは、緊張を解くために無理に使うのではなく、緊張が解けたタイミングで活用することで、より効果的になるのかもしれません。ビジネスの挑戦者たちが、スマートな商談の始め方を模索し続ける中で、アイスブレイクの技術も進化していくことでしょう。