「諦めていた髪色を、もう一度」――出島型新規事業iropが切り開く、アフターサロンケアという新市場

私たちTHE WHY HOW DO COMPANYのグループに、2025年9月、株式会社イロップが資本業務提携という形で加わってくださいました。

「好きな髪色、つづけよう。」をコンセプトに、カラーシャンプー・トリートメントを展開するD2Cブランドです。なぜ私たちがイロップを心から応援しているのか。それは、この事業に込められた想いと、困難を乗り越えてきた軌跡を知れば、きっと伝わると思います。

「氷山の下」に隠れた本音を掘り起こす

美容室で2万円かけてカラーリングしても、たった1週間で色落ちしてしまう。「シャンプーしたら落ちるよ」と言われ、次の美容室訪問までの大半を「色落ちした状態」で過ごす。日本では女性の約7割が髪を染めているにもかかわらず、これが「当たり前」になっていました。

取締役COOの加藤槙子さんは、この課題に向き合う中で、表面的な声ではなく「氷山の下」に隠れた本音に注目しました。

「なぜ暗い色にしたいのか」を深掘りすると、「どうせ1ヶ月後には色落ちするから、諦めて無難な色にしている」という声が出てきた。さらに「本当はどんな髪色にしたいか」と聞くと、「ピンクにしたかったけど、頻繁に美容室に行ける時間もお金もないから諦めた」という答えが返ってきたのです。

加藤さんはこれを「義憤」と呼びます。本人さえ忘れてしまっているような諦めや行き場のない想いを掘り起こすこと。ここにイノベーションの種がありました。

「意外な来訪者」との出会い

3年の開発期間を経て迎えたローンチ。しかし現実は厳しいものでした。

目玉企画だったオンライン診断にはユーザーが集まるものの、購入にはまったく繋がらない。インフルエンサーPRも効果なし、広告を打っても売れない。「この事業、こけるんじゃないか」という暗雲が立ち込めました。

転機となったのは、ローンチから3ヶ月後の宮下パークでのポップアップストアでした。1週間で約1,200人が診断を体験し、そのうち約10人に1人が購入。コンバージョン率12%という、オンラインの12倍の数字を叩き出したのです。

ここで得られた最大の発見は、ターゲットの見直しでした。当初想定していた「ヘアカラー感度の高い20〜30代のおしゃれな女性」ではなく、「好きな髪色を諦めかけている30〜50代のアラフォー世代」こそが、切迫した課題を持つ真のターゲットだったのです。

派手髪の若い層だけでなく、子育てで美容室に行けないママ、白髪が気になり始めた世代。普通の茶髪の方が使えたり、こっそり白髪カバー目的で使っている人もいる。

加藤さんはこの現象を「意外な来訪者」と呼んでいます。

「どんな新規事業でも、一度は仮説が崩れる。そして、その後に『思ってもみなかった人』が現れる。そこで『違う』と切り捨てるのか、『これが新しい兆しだ』と捉えるのかで、事業の未来はまったく変わります」

「忙しい毎日でも、好きな自分で居続けたい」

加藤さんは、iropの会員に共通する想いをこう語っています。

「イロップの会員様に共通するのは、『忙しい毎日でも自分の好きな自分で居続けることで、気分やQOLを高めていきたい』という強い思いです」

この言葉に、私たちは深く共感しました。

サロン帰りの理想の仕上がりを長く楽しんでいただける習慣を提供する。それは単なる「商品販売」ではなく、お客様の日常に寄り添い、「好きな自分」でいられる時間を守ることなのです。

美容師という「仲間」の発見

構造改革の中で、美容師チャネルが想定以上に成長していることが明らかになりました。ある美容師は、iropの月間売上の4%を一人で販売していたのです。

さらに、美容室を経営する美容師や、若手美容師の育成に携わる方から「これは今の時代に合っている。広めるお手伝いをしたい」という声が上がりました。美容ディーラーからも「色落ちしないカラーという美容室業界の常識を作れる可能性がある」との期待が寄せられています。

iropは、お客様だけでなく、美容師という「仲間」も巻き込みながら、新しい市場を切り開こうとしています。

私たちが応援する理由

私たちがiropを応援する理由は、事業の規模や成長性だけではありません。

「どうせ色落ちするから」と諦めていた人の本音に寄り添った加藤さん。「商品が強いことが希望でした」と語る吉田さんの冷静な分析力。そして「好きな自分で居続けたい」というお客様の想いを大切にする姿勢。

そういう素敵な方々が事業を育てているから、私たちはiropを心から応援しています。

出島型新規事業の教訓

iropの軌跡から得られる教訓は、多くの企業にとって貴重なケーススタディになると考えています。

プロダクトの優位性なくして立ち上げるな。 ピボットに耐えられたのは、圧倒的なプロダクト価値があったから。一般的なカラーシャンプーが明るい派手な髪にしか対応できない中、iropは暗めの髪色にもしっかり色を入れられる技術を持っています。

オンラインでもリアルの顧客接点が必要。 D2Cだからこそ、対面での気づきが事業を変えました。

CHALLENGER編集部より

「好きな髪色、つづけよう。」

このシンプルなコンセプトの背景には、「諦めていた人の本音に寄り添う」という深い想いがありました。

私たちワイハウは、SEEDER様と共に、iropの1万人美容コミュニティを活用したコミュニティマーケティングの実証実験を進めています。また、リサーチ・プランニングから実証実験まで一貫支援するサービスも、iropとの協業から生まれました。

iropの皆様と共に歩んでいけることを、心から嬉しく、そして誇りに思っています。


本記事は2025年12月13日時点の公開情報に基づいて作成しています。

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