人類のエネルギー問題と環境問題を同時に解決する“究極のエネルギー”として期待される、核融合発電。その累計市場規模は2050年にかけて100兆円に達するとも試算される、まさにディープテックの最前線だ。
しかし、この壮大な未来の実現には、巨大な“ボトルネック”が存在した。燃料確保に不可欠なレアメタル「ベリリウム」の、圧倒的な供給不足と高コストである。
この巨大な壁を、革新的な技術で打ち破ろうとするスタートアップが、青森県三沢市に存在する。株式会社MiRESSO(ミレッソ)だ。
この度、シードVCの雄である株式会社ジェネシア・ベンチャーズが、MiRESSOのシリーズAラウンドにおいてシードに続く追加出資を敢行した。これは、単なる資金提供ではない。日本の未来の産業構造を変えうる、壮大な挑戦への“共犯者”となる覚悟の表れだ。
なぜ「低温精製技術」がゲームチェンジャーなのか?
MiRESSOの技術的優位性は、ただ一点に集約される。「低温精製技術」だ。
従来、ベリリウムをはじめとする多くのレアメタルの精製には、膨大なエネルギーを消費する「高温処理」が不可欠だった。これが、高い製造コストと大量のCO2排出の元凶となっていた。
しかし、MiRESSOが持つ技術は、この常識を覆す。量子科学技術研究開発機構(QST)の知見を基に発明されたこの技術は、低温・常圧下で鉱物を精製することを可能にする。これにより、
- 圧倒的な低コスト化: 核融合発電の商業化を阻んでいた、ベリリウムのコスト問題を根本から解決する。
- 省エネルギー・低CO2排出: カーボンニュートラル社会の実現に大きく貢献する。
- 汎用性: ベリリウム以外の様々なレアメタルにも応用可能で、「技術プラットフォーム」として展開できる。
という、まさにゲームチェンジングな価値を生み出すのだ。
青森から始まる、日本の「資源安全保障」
ジェネシア・ベンチャーズがMiRESSOに賭ける理由は、単なるエネルギー革命への期待だけではない。彼らは、日本の「戦略物資の安定確保」という、国家レベルの課題解決までを見据えている。
資源の多くを海外からの輸入に依存する日本にとって、MiRESSOの技術は、国内で低コストにレアメタルを精製し、循環型社会を構築するための切り札となり得る。青森県八戸市に建設されるパイロットプラント「BETA」は、まさにその未来への第一歩だ。
シードVCがディープテックに“深く”賭ける意味
ジェネシア・ベンチャーズのInvestment Managerである曽我部崇氏は「MiRESSOチームの高い研究開発力、事業開拓力にも強い信頼を寄せている」と語る。
研究開発に長い時間と多額の資金を要するディープテック領域において、シード期から粘り強く伴走し、シリーズAでも力強く背中を押し続ける。このVCの姿勢こそ、日本の産業構造を変革するような、壮大なビジョンを持つスタートアップを育むために不可欠な土壌だ。
MiRESSOとジェネシア・ベンチャーズ。研究開発と産業の“はざま”に挑む彼らの挑戦は、日本の、そして人類の未来を明るく照らす、大きな希望の光となるだろう。
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