日本鋳造株式会社は、1920年の創業以来、造船や鉄鋼、各種産業機械向けの高品質鋳造部品を提供し続け、日本の産業発展を縁の下で支えてきました。現在は素形材事業、エンジニアリング事業、建材事業の3つの事業を展開し、自動車、建設機械、産業機械、橋梁、建築など、実に幅広い分野で活躍しています。
同社の最大の強みは、長年培ってきた熟練の職人技と、IoTやAIなどの最先端デジタル技術を高度に融合させる点にあります。素形材事業では、この融合によって生み出された独自の低熱膨張材「LEX」が、半導体・液晶製造装置や宇宙・防衛分野で高い評価を得ています。また、エンジニアリング事業では、高度な設計・解析技術と高品質な鋳造品の組み合わせが、東京スカイツリーや羽田空港の拡張工事など、大規模プロジェクトの成功に貢献しています。
建材事業でも、同社の技術力は遺憾なく発揮されています。免震・制振デバイスや鋼構造物の接合金物など、高度な機能性が要求される分野で、日本鋳造の製品は多くの実績を上げています。特に、建築物の設計自由度を高める独自の固定柱脚工法「NCベースP」は、デジタル設計技術と高性能材料の融合によって生まれた画期的なソリューションです。
デジタル技術を活用した技術伝承と人材育成にも注力
日本鋳造が創業100周年を迎えた2020年は、同社にとって大きな転換点となりました。「次の100年も産業界の発展に貢献し続ける」という決意のもと、デジタルトランスフォーメーション(DX)を加速し、グローバルな競争力の強化に乗り出したのです。
DXの一環として特に力を入れているのが、技術伝承と人材育成の分野です。ベテラン社員の持つ勘やコツをAIに学習させ、デジタルツールを活用して若手社員に伝えるなど、同社ならではのユニークな取り組みを進めています。また、社内の改善提案制度をデジタル化し、全社員が参加しやすい環境を整備。アイデアを出しやすく、挑戦しやすい企業文化の醸成にも努めています。
CHALLENGER編集部より
鋳造業界は、自動車のEV化や環境規制の強化など、大きな変革期を迎えています。こうした中、日本鋳造は伝統の職人技とデジタル技術の融合によって、新たな付加価値を生み出し続けています。100年の歴史を礎に、次の100年も時代の変化を先取りし、イノベーションを起こし続ける。日本の「モノづくり」の真髄を体現する同社の取り組みは、製造業の未来を照らす道しるべとなるでしょう。新しい時代の産業創造を担う同社の挑戦から、目が離せません。
(産業動向分析部門、鋳造業界担当)
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