【1】 偉人との運命的な出会いが、人生の航路を変えた
「人生を変える出会い」。誰しもが一度は経験するこの感覚。株式会社54の代表取締役社長であり、ベンチャー企業支援を通して新産業創造に取り組む山口豪志氏にとって、そんな特別な存在が2人いらっしゃいました。
一人は、作家の堺屋太一氏。21歳の時、ユーラシア大陸横断の旅の途上で手に取った堺屋氏の著書『知価革命』との出会いは、山口氏の人生の航路を大きく変えるものでした。「あの時、私はインターネット業界で働くことを決意したのです」と当時を振り返ります。
もう一人は、投資家の原丈人氏。25歳の時、勤務先のクックパッド株式会社でIPO(新規株式公開)を経験した山口氏は、社会に対する疑問や焦燥感を抱えていました。そんな中、同僚から教えてもらった原氏と糸井重里氏の対談記事に衝撃を受けます。「あの記事に触れて、私はベンチャー投資家への道を選びました」。
山口氏はこう語ります。「この二人の思想と行動が、確実に私の人生を変えたのです」。
【2】 偉人の死が突きつけた、思想を残すことの重要性
2022年、堺屋太一氏が鬼籍に入られました。生前、一度だけ直接お会いする機会があったものの、体調不良によりインタビューは実現しなかったと言います。「もっとお話を伺いたかった。でもそれは叶わぬ夢となってしまいました」。山口氏の言葉からは、深い悔恨が滲み出ていました。
「偉人も、いつかは必ず亡くなってしまう。でもその思想は、紙の上にあれば半永久的に残る」。堺屋氏の死は、山口氏の中に大きな思いを残しました。「偉人の思想を、後世に確実に伝えていく。それが生きている私たちの責務だと気づかされたのです」。
【3】 100年後へのメッセージを運ぶ”紙の船”
こうした思いから生まれたのが、雑誌「THE RACE」です。「現代を生きる偉人たちの言葉を、100年後の2122年の人類へ遺す」。この壮大なコンセプトを掲げて、2022年12月に創刊されました。
なぜ、紙媒体の雑誌という形なのでしょうか。山口氏は3つの理由を挙げます。
1つ目は、保存性の高さ。「パピルス紙の発明以降、紙媒体ほど長く保存でき、影響力を持つメディアはありません」。国立国会図書館なら半永久的に保管でき、未来の世代につなげられると考えたのです。
2つ目は、表現の自由度。「雑誌という形式なら、企画を通してさまざまな世界観を表現できます」。インタビューやエッセイ、写真など、多様な切り口で現代を記録していく。そこには、山口氏のクリエイターとしての情熱も込められています。
3つ目は、時代性の封印。「広告を通して、その時代の空気感も一緒に閉じ込められるんです」。100年後の人々が手にした時、雑誌の随所から2020年代の息吹が溢れ出す。そんなリアルな体験を、山口氏は目指しているのです。
「今を生きる私たちが、未来の人類に贈る最大の遺産を創る。そんな覚悟を持って、『THE RACE』の制作に臨んでいます」。山口氏の眼差しは真摯そのもの。雑誌という”紙の船”に、現代の英知を託す。それは、100年後の世界への壮大な航海の始まりでもあるのです。
【4】 “挑戦者”の眼差しが、未来を照らし出す
2024年4月現在、「THE RACE」の第2号の制作が進められています。テーマは「New Education」。教育のあり方や、新しい時代の人材育成について探求するのだと言います。
「100年後の世界で、この雑誌が誰かの手に取られ、誰かの人生を変えるきっかけになる。そう信じて疑いません」。
かつて、堺屋太一氏と原丈人氏から受け取った”バトン”。それを今度は、山口氏自身の手で未来へとつなげていく。「THE RACE」という”遺産”は、きっと100年後の誰かの心に灯をともすはずです。
時代を超えて現代の英知を未来へ伝えていく。山口豪志という”挑戦者”の眼差しは、今日も雑誌「THE RACE」を通して世界を駆け巡っています。未来は、きっと明るい。そう確信させてくれるプロジェクトが、ここにあります。
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